新規事業におけるメンタリングとは。重要性と効果を解説

新規事業におけるメンタリングとは。重要性と効果を解説

はじめに

新規事業開発は多くの場合、未知の領域での挑戦であり、様々な困難が伴います。その中で近年注目されているのが「メンタリング」の活用です。

本記事では新規事業におけるメンタリングとは何なのか、なぜ重要なのか、メンタリングを有効活用するポイント等について解説します。

新規事業メンタリングとは?

新規事業メンタリングとは、いわゆる「伴走」型での新規事業開発・立ち上げに関わるサポートスタイルを指します。

それってコンサルティングとは何が違うの?

という質問をよくいただきますが、コンサルティングとは以下のように違いを整理できると考えます。

  • 新規事業コンサルティング:”外部のコンサルタント”として一定の期間において、クライアントに代わって調査や分析機能を担い、アイデアやプラン検討を代行したりブラッシュアップする
  • 新規事業メンタリング:”チームの一員であるメンター”として、期間に縛りが無く、クライアントの相談相手として必要な視点や、議論相手を担い、クライアントの調査や分析の高度化を支える

このように、新規事業メンタリングは、チームに寄り添った持続的なサポートを提供することで、新規事業開発のプロセスを強化します。

私たち(メルセネール)はクライアントのご要望に応じてコンサルティング、メンタリングの両形態どちらも提供していますが、新規事業の文脈においてはメンタリングの比率がここ数年で顕著に高まっています。

なぜメンタリングが増えているのか

新規事業メンタリングが増えている理由のひとつとして、新規事業開発の現実とその困難さへの認識の変化によるものが挙げられます。

昨今、「新規事業を検討せよ」というお題は様々なところで耳にする話です。ここ数年間の傾向でもありますが、以下のような流れが周回した印象があります。

①最初は「新たなチャレンジの機会!」として意気揚々に取り組む

②いざ始めてみると、調査やアイデア出しに壁を感じ始める

③「部分的には外部を活用した方が早いのでは?」と外部コンサルの協力を仰ぐ

④調査やアイディア・ビジネスモデルを外部コンサルが描く

⑤自社で描いたモデルでは無いため、「あれ、このモデルってなんで成立するんだっけ?」と納得や理解が不十分な状態となる

⑥実行に落とし込む段階で頓挫/失敗する…

このような流れを経て、「新規事業は他の誰でも無い自社のモノなんだから、検討を外部に委託して、実行から担うなんておかしい」と気づいている人が増えてきたと考えられます。

一方で、

  • 新規事業開発に際して、右も左もわからない中で非効率な検討はしたくない
  • 管轄する役員や上司からすれば、(成功の確約はなくとも)より良い案を現場から出して欲しい

という想いもあるようです。実際に多くの担当者や役員・部長クラスの双方から頂いているお話です。

このような背景を踏まえ、「あくまで主役は自社であるが、そこに伴走し、支援する存在」としてメンタリングの形式が増えてきたのではないかと考えます。

なぜメンタリングが重要なのか

前述のように、新規事業開発において外部のノウハウやスキルを取り入れずに進行するのは非効率であり、不安も伴い、失敗の原因となります。

その一方で、外部のコンサルタントに全てを委ねてしまう姿勢では、新規事業は上手くいきません。新規事業の成功は自社が主役であることが前提なのです。

ここで、メンタリングが重要な役割を果たします。メンターは決して主役を奪うことはありません。むしろ、適切に「伴走」し、必要なノウハウやスキルを提供します。また、いつでも気軽に相談を受けられるような立場であり、チームメンバーの自発的な成長を促します。

このように、新規事業開発におけるメンタリングは、外部の知識とスキルを効率的に取り入れつつ、現場の主体的・自律的な活動を促進する役割を果たします。。これが、新規事業メンタリングが重要である理由です。

メンターが提供する価値

新規事業開発においてメンターが提供する価値はやり方次第で様々ですが、一般に下記の内容が挙げられるでしょう。

考える道筋を示す

メンターの大きな価値の1つは、メンティー(メンターを受ける側)の考える道筋を提供すること。一般的なコンサルタントの価値が「考える代行をする」とするならば、メンターの価値は「(メンティーが自分で)考えるサポートをする」ことにあると言えます。

セオリーや方法論の提供

いわゆるコンサルタントと同じく、セオリーやノウハウの提供はメンターの価値のひとつと言えます。ただしコンサルタントはそれらを用いて分析や検討を行う一方、メンターはあくまでメンティーが自分で考えるためのガイドとしてそれらを提供することが大きな違いです。

リアルな経験に基づく助言

実際に新規事業開発に携わってきたメンターならば、自身の経験に基づく助言が大きな価値になります。一般的なセオリーは世に溢れている一方、まだまだセオリー化されていない落とし穴が多数あるのが新規事業の世界。メンターの助言は、大失敗を避けるガイドの役割を担います。

当事者が気づかない視点の提供

メンターはチームの一員として伴走しつつも、あくまで外部の人間として事業を客観的に見る役割も担います。当事者間だけでは気づかないポイントや、うやむやにしがちな論点に対する外部の視点を提供することで、事業を成長に導くサポートをします。

気軽に相談できる環境によるスピードアップ

「悩みや不明点があるが、社内に聞ける人がいない」「上司に相談するのは気が引ける」などの理由で担当者が抱え込んでしまい、結果、事業のスピードがダウンしてしまうこともよくあるもの。

自分なりに悩むことは大事ですが、悶々とする時間を長く過ごすことにあまり意味はないでしょう。それよりも、経験や知見がある人に素早く相談し、検討を素早く回すことに時間と労力を割くべきです。

そこでメンターが「いつでも何でも気軽に相談できる環境」を提供することで、相談とフィードバックのサイクルを回し、その結果スピードアップに繋げることができます。

チームメンバーおよび組織の成長

メンターの伴走は、メンバーや組織の成長にも繋がります。組織に新規事業の思考の道筋やプロセスをインストールしつつ、メンバー自身に考える機会を提供することで、単なるノウハウに留まらない、自分で考え実行する「自走する組織」への変革も促します。

「共通言語」という「資産形成」に繋がる

新規事業開発が強い組織には、「新規事業開発の共通言語がある」という特徴があります。

過去に弊社では「新規事業が上手くいった」企業・組織について、その要因を探る調査を行ったことがあります。その結果、成功企業・組織ほど内部に「共通言語」を持っていることが明らかになりました。

ここで言う共通言語とは、”新規事業を成功に導くプロセス・考え方・マインドがその組織なりに言語化されており、メンバー間で共有されている” イメージを持っていただけると良いかと思います。

新規事業の検討活動を通じて、「共通言語」を資産として蓄積していくことは重要です。メンターによるノウハウや考える道筋の提供は、その資産形成の一助になるはずです。その資産形成ができれば、外部活用とは無縁の強い組織を作ることができます。

メンターが実際に行うこと

新規事業のメンターは具体的にどのようなことを行うのでしょうか。その内容はメンターによって様々ではありますが、ここでは弊社メルセネールのメンターが行っている内容を中心に挙げていきます。

全体像の整理

事業計画に必要な基本項目や、メンティー側の課題等の必要な情報をまず集め、整理します。その上で本質的に必要な検討項目を洗い出していきます。

スケジュールや役割分担の設計、定例メンタリングでの議論テーマ等の設定も最初の整理として行うケースも多いです。

定例メンタリング

週次程度のペースで定例ミーティングを実施します。ディスカッションから様々な悩み相談まで対応します。主にはこの定例ミーティングの中で、前述した「考える道筋の提示」「外部からの視点提示」などの価値を発揮していくことになります。

ナレッジインストール

不足する知識・スキルを補うナレッジインストールも行います。顧客分析や、ビジネスモデルの検討方法を解説しつつ、その適用方法を共に検討します。定例メンタリングの中で行う場合に加え、別途トレーニングやワークショップ形式で行う場合もあります。

ショートメンタリング

次回の定例を待たずに話したい、ちょっとした悩みを相談したい、等の際に15~20分のショートミーティングを実施します。「急遽明日キーパーソンへのアポイントが取れたが、何を聞き出すべきか相談したい」等のケースで実施します。

チャットやメールでのサポート

弊社のメンタリングでは、「素早く相談・確認しておきたい」ような事項をいつでもチャット・メールで気軽に相談いただけます。メンターからの情報提供も随時チャットを通じて実施します。

外部企業との交渉・調整同席

必要に応じて外部企業(調査会社等)との会議に参加するケースもあります。各お打ち合わせに同席し、適宜サポートします。

事業マネジメント層とのディスカッション

チームを管轄されるマネジメント層の方々とメンターが直接対話します。現状を踏まえて組織的に捕捉すべきリソースや、新事業を担うリーダーに必要な素養をメンター視点で提示し、方針に関する議論を行います。

月次レポート作成

月次での活動、およびメンターから見た検討状況やチームメンバーの状況をレポートにまとめて報告します。レポート内の観点は初期カウンセリングを踏まえて個別に設定します。

以上がメルセネールの新規事業メンターが実際に行っている内容です。実際にはクライアント企業の課題や要望に合わせて、実施内容を絞ったり、より踏み込んだ形に追加したり…とカスタマイズするケースも多いです。

なおメンターによって行う内容は様々ではありますが、「定期的な対話を通じてメンティーが考えるサポートを行う」という点は多くのメンターに共通しているはずです。

メンタリングを有効活用するためのポイント

ここではメンティー側の視点で、メンタリングをフル活用するためのポイントについて解説します。

①メンターの役割を理解する

まず理解しておくべきは、メンターはあくまで支援者であり、全ての答えを提供する存在ではないということです。

メンターはメンティーの思考をサポートし、必要な視点や知識を提供します。しかし、そのアドバイスは指示ではなく、メンティー自身が考え、行動するための一助です。これはメンタリングの大前提となります。

②オープンなコミュニケーションを心掛け、信頼関係を築く

メンターとメンティーが長期的な信頼関係を築くべきであることは言わずもがなであり、メンターとしても常に心掛けるべきポイントです。

その上でメンターの立場からメンティーにお願いしたいこととして、
「何でも思ったことを遠慮なく相談して欲しい」
「恥ずかしさや間違うことを恐れずにオープンにコミュニケーションを取って欲しい」

の2点があります。

変にメンティー側が遠慮してしまったり、間違いを恐れてオープンに相談をしないと、メンターの価値が充分に発揮されないこともあります。

是非、「遠慮せず、わからないことはわかるまで聞く」という気持ちでメンターを活用いただけると良いでしょう。

③第三者(上司やマネージャー)による適切なウォッチ

メンタリングの形式によっては、直接のメンティーとは異なる第三者(上司/マネージャーや人事)がメンターを選定し、事務局的な役割を担うケースもあるでしょう。その場合、その第三者がメンタリングの状況を適切にウォッチすることが大事です。

メンター・メンティー共に人間なので、それぞれクセや特性もあり、相性も異なります。メンターを入れたら後は放置、ではなく、メンタリングが上手くいっているか、相性はどうか等を第三者の視点からウォッチすることで、メンタリングの効果をより高めることができる可能性があります。

新規事業のどのタイミングでメンターを入れるか

新規事業において、メンターを入れるタイミングは一概には決められません。しかし、初めてメンターを利用する場合は、CPF(Customer Problem Fit)、すなわち顧客課題の探索・検証のフェーズで入れるのがおすすめです。

それ以前のアイディア出しフェーズでは企画者の創造性に頼るところも多いため、メンターの価値が発揮しにくい場合があります。一方で、仮アイデアをベースに顧客課題の検証・調査などを行う、ロジカル / クリティカルシンキングが求められるCPFのフェーズでは、メンターの存在が大きな助けとなるはずです。また、この段階では進捗も見えやすく、新規事業開発のプロセスを学ぶのに適しています。

その後の事業実行フェーズでは、技術や業界特有の要素、専門分野などがより重要になるため、求められるメンター像が変わっていく可能性があります。フェーズや課題に応じてメンターを使い分けるのが理想的です。

新規事業メンターの探し方

メンターの探し方としては一般に以下が考えられます。

①Webサービスやエージェントの活用

まず、ビジネスマッチングサービスや人材エージェント等を活用してメンターを探す方法が考えられます。各分野のプロとメンターとして気軽にマッチングできるサービスも増えてきていますので、利用を検討してみても良いでしょう。

②人脈から探す

社内外の人脈から探すのも1つの手です。近年は副業をしているビジネスパーソンも増えてきているため、社内外の知り合いのツテをたどることで、新規事業立ち上げやメンターの経験がある人と出会える可能性も比較的高まってきていると言えます。

当社が実際に聞いたお話では、アクセラレータープログラムで出会った人、過去取引があったコンサル、会社を退職して独立したメンバーなどにメンターとして入ってもらうケース等があるようです。

③専門企業に頼む

もう一つは新規事業のメンタリングを専門としている企業に依頼することです。メンタリングはもちろん、コンサルティングや事業立ち上げを経験しているプロも在籍しているケースも多いため、安定したクオリティのメンタリングが受けやすい可能性があります。

※当社メルセネールでも新規事業に特化したメンタリングサービスを提供しています。
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良い新規事業メンターってどんな人?

いざ新規事業メンターを探し始めても、「どんな人が良いかわからない…」となってしまうケースも多いでしょう。

参考までに私たちが考える「新規事業メンターとして理想的な人材要件」をお伝えしますと、「コンサルティング等で様々な事業を幅広く見た経験があり、かつ事業立ち上げの経験があり、かつメンタリングの経験もある人」となります。

つまり「多様な事業への関与経験 × 事業立ち上げ経験 × メンタリング経験」という3つの経験の掛け合わせがあることが理想です。

「そんな人中々いないよ!」というのはご尤もなのですが、少なくともこのうち2つの掛け合わせを持つ人を選ぶべきだと考えます。

例えば「新規事業立ち上げ経験者」のメンターは多いのですが、特定事業での成功体験は意外と汎用化が難しく、他の事業には適用できないケースも多いです。その意味ではコンサルティング等で多様な事業に関わった人の方が、汎用的で客観的なメンタリングをできる可能性が高いと言えるでしょう。

一方で前述のようにコンサルティングとメンタリングには根本的な違いがあるため、良いコンサルタントが良いメンターであるとも限りません。

このようにメンター選びには様々な落とし穴が存在するため、注意する必要があります。

(このテーマは奥が深く語る内容も多いため、別記事での解説を検討中です!)

※メルセネールでは新規事業コンサルティング・メンタリング両方の経験豊富なメンターによるメンタリングサービスを提供しています。
詳しくはこちらをご覧ください。

新規事業メンタリングの事例

ここでは実際の事例として、メルセネールがパナソニック株式会社様に実施したメンタリングの概要をご紹介します。

事例サマリー

  • 事前課題:新規事業創出に向けた社内ビジネスコンテストの運営において、限られたリソースで良い成果を産む必要があった
  • メンターが実施したこと:各事業検討チームにメンターとして入り、定期的な壁打ちミーティングやチャットでのアドバイスを実施。ビジネスコンセプトの設計、モデルの開発、プラン提案など、新規事業を考える上で必要な支援を実施。
  • 得られた成果:事業提案内容の質が向上し、事業推進者の成長・自走化が実現できた

より詳しくは以下の記事をご覧ください。

まとめ

以上のように、新規事業メンタリングは、コンサルティングとは異なるアプローチで事業の成功確度を高め、組織自体を強化する上で有効な選択肢です。

良いメンターとの出会いは、事業の推進の支援にとどまらず、皆様自身の成長や成功にも繋がると私たちは考えています。

現在新規事業立ち上げで悩まれている方は、是非メンタリングの導入を検討されてみてください。

メルセネールのメンタリングについて

記事中でも言及しましたように、弊社メルセネールでは新規事業のメンタリングサービスを提供しております。

大手コンサルティング企業での豊富なビジネス経験に加え、自社事業にも携わり、メンタリングの経験も豊富なプロフェッショナルが貴社の事業に伴走いたします。

少しでもご興味がある方は是非お気軽にお問い合わせください。

メルセネールの新規事業メンタリングサービスについて詳しくはこちら

             

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