ビジネスモデルキャンバスの「本当の」書き方②ビジネスモデルの中核を抑え、肉付けする

ビジネスモデルキャンバスの「本当の」書き方②ビジネスモデルの中核を抑え、肉付けする

新規事業において必須のビジネスモデル検討。その上で有用なフレームワークが「ビジネスモデルキャンバス」です。本記事シリーズでは、このフレームワークの実践的な作成方法について解説します。

前回の記事「ビジネスモデルの基礎と骨格作り)では、ビジネスモデルキャンバスの概要と、「骨格」をつくる方法を解説しました。本記事ではその「骨格」に「肉付け」を行い、より実用的なビジネスモデルキャンバスを作っていく方法を解説します。

ビジネスモデルの中核

前回までの内容で、ビジネスモデルキャンバスの骨格は出来上がりました。今回はその「肉付け」を行い、詳細化していくプロセスを紹介します。

ビジネスモデルキャンバスの詳細化にあたっては、「中核」を意識することが重要です。

その中核とは、「CS(ターゲット顧客セグメント)」「VP(提供する価値)」 の2つです。

このCS×VPがなければビジネスが生まれることはありません。またこの2つが変わると、ビジネスモデル全体に影響を与えることになります。その意味でここがビジネスモデルの中核と言えます。 

まずはCS×VPを徹底的に検討する

まずこのCS×VPを詳細に検討することが、ビジネスモデルを実践的な形に肉付けする上での重要プロセスとなります。

この検討が不十分なままビジネスが走り出してしまうと、後で取り返しがつかなくなり、ビジネスの失敗確率が上がってしまいます。

CS×VPの詳細な検討方法について見ていきましょう。

CSの検討:顧客を理解する

CSの検討においては顧客理解が大前提となります。顧客理解の重要性は様々なところで語られているため、その大切さを理解している方は多いと思います。

しかし一方で、いざビジネスモデルを描くとなったときに、顧客理解が不十分なまま進めてしまうケースが多く見られます。

例えば「あなたのターゲット顧客は誰ですか?」と言った問いに対し、「建設業界です」「子どもをもつ家庭です」のように、ざっくりとした属性のくくりでしか答えられない、といったケースがよくあります。

顧客理解においては、「顧客の顔が具体的に見えてくる」まで理解を深めることが必要なのです。

顧客課題を定義する

詳細な顧客理解においては、顧客の抱えている課題を理解することが大事です。我々は、顧客課題を考える上で、以下の3つの要素を明確にすることを推奨しています。

  • 理想の状態
  • 悩み・Pain:理想の状態に至ることを阻害するもの
  • 現在の状態

「顧客の悩みを考えましょう」とはよく言われることですが、やみくもに考えるのではなく、
「顧客にとって『理想の状態』は何なのか?」
「その理想と現状にはどんなギャップがあるのか?」
「そのギャップを産んでいる要因は何か?」
といった順序で考えることが大切です。

実際の検討の中では、この3つについて「課題仮説」を設計し、その仮説をインタビュー調査等を通じて分析・検証していくことになります。単なる悩み・Painだけでなく、理想・現状との3点セットで考えることがポイントです。

※顧客の課題の深掘りについて詳しくは以下の記事も合わせてご覧ください
顧客の悩みを理解するコツ(PainとGain)

VPの検討:その価値は、本当に顧客に響いているのか?

顧客の理想状態・現状・その間の壁となるPainや悩みが明らかにできたら、それに基づいてVP(提供価値)を深く検討していきます。 

その際は、「いま検討している提供価値は、本当に顧客に響くのか?」という問いを深く考えることが重要です。

例えば、あなたの会社が木材などに穴をあけるためのドリルを売っているとしましょう。製品の特徴として、独自の製錬技法とノウハウにより、非常に硬い歯と高い回転数をもっています。

顧客課題の深掘りの結果、主要な対象顧客層の1つは「日曜大工をするお父さん」で、「子どもたちと一緒にDIYを楽しみながら、父親としていいところを見せたい」という「理想の状態」を思い描いていることがわかりました。

そんなお父さんに対して、「業界最新の技法で作られた非常に堅い歯をもつ」「世界最高水準の回転速度を誇る」といったドリルの特徴をそのまま伝えたとして、心に響くでしょうか?

おそらく多くの日曜大工お父さんは、「そんなの必要ないし、興味もないよ」と感じ、あまり欲しいとは思ってもらえないでしょう。

このように、顧客の課題やPainを無視した特徴を訴求しても、提供価値としてはうまく伝わらないのです。

”顧客課題”を適切に解決する価値は?

提供価値の検討に当たっては、前の段階で検討した顧客課題を踏まえることが必要です。

日曜大工のお父さんの例で言えば、「子どもたちに相手にされなくなっている」という「現状」に対し、「父親としての存在感やカッコよさを子どもたちに認識させたい」という「理想」があり、その理想を阻害する「悩み・Pain」として「父親ならではのすごさやカッコよさを示す機会がない」といった課題を抱えていることがインタビューの結果わかったとします。

その課題をドリルで解決するための提供価値を考えると、「日曜大工で扱う木材なら簡単に素早く穴を空けられ、子どもたちにカッコいい姿を見せられる」などが考えられます。 

その提供価値を産み出すプロダクトとして「歯が硬く回転数の多いドリル」があり、それを実現する自社の強みとして、「独自の製錬技法やノウハウ」が活きる、ということになります。

「提供価値」⇔「プロダクト/サービス」⇔「自社の特徴」を整合させる

このように、提供価値の検討においては

①(顧客課題を解決するための)提供価値

②プロダクト/サービス

③自社の強み/特徴

の3つが整合するようにそれぞれを検討することが大事です。

これらは一方通行で進むのではなく、実際には何度も3つの要素間を行ったり来たりしながら突合を繰り返していくことになります。

時には「今のプロダクトでは提供価値を満たせないから、プロダクト自体を変えよう」となるケースもありますし、「提供価値が顧客に伝わりづらいから、提供価値を別の言い方に変えよう」「今の自社の技術では提供価値を満たせないから、顧客セグメント自体を見直そう/価値を満たすためにパートナーの協力を得よう」など、それぞれの要素の見直しや再検討、時にはピボットしていくこともあり得ます。

この取り組みは、実際にはかなりの我慢強さを要します。しかしこの3要素の整合を我慢強く検討することで、事業の成功確率は大きく高まるはずです。

提供価値を進化させる”ロジック”と”ひとひねり”

これまで述べたように、顧客の理想の状態やPainが明確になると、ある程度ロジカルに提供価値やソリューションを考案することができます。

しかし、ここまでできた方が陥りがちな問題として、「ありきたりなソリューションになってしまう」「競合がすでにやっている」といった壁にぶつかってしまうことがあります。

そこで、真に競争優位性を持ち、継続的な価値提供を行うためにも「価値のひとひねり」を加えることをおすすめしています。

例えば以下の写真をご覧ください。

引用元:https://www.gehealthcare.co.jp/products/accessories-and-supplies/adventure-series-for-ct/ct-pirate-island-adventure

こちらは、GEヘルスケア社が提供する、子供のためのCTスキャナーです。スキャナーを海賊船に見立て、無機質な医療機器を「楽しい」ものに変えています。

子供にとってCTスキャンは、狭く無機質な空間に閉じ込められてしまう、怖いもの。

そんな子供にとってのPainを解消する方法をロジカルに考えると、「機器を大きくする」「短時間で終わるようにする」などのソリューションがまずは思い浮かびます。

しかしGEヘルスケアはそこでとどまらず、「実時間はそのままでも体感時間を変えられないか?」「そのために、楽しい空間だと感じてもらえないか?」という「価値のひとひねり」を行ったのです。

その結果、子供たちが怖いと感じないどころか、楽しささえ感じてもらえるCTスキャナーを編み出したというわけです。

このように、顧客の切実なPainを踏まえてまずは論理的に考えながらも、「ひとひねり」を加えることで、ユニークで競争優位性のあるソリューションを編み出す可能性を高められます。

「ひとひねり」のためには、自社の強みなどに囚われすぎず、「遊び心」をもって検討することがポイントです。また、様々な事例から「ネタ」や「視点」のストックを持っておく姿勢も大切です。

簡単に出来ることではないですが、社会でうまくいっているビジネス等について、どんな「ひとひねり」が行われているか着目し、自身の中にストックを作っていくことをおすすめします。

まとめ

ビジネスモデルキャンバスの中核は、「CS(顧客セグメント)」と「VP(提供価値)」にあります。この2つを徹底的に詳細に検討することが非常に重要なプロセスとなります。

CSの検討にあたっては、「顧客の顔が見える」レベルまで顧客理解を深め、

  • 理想の状態
  • 悩み・Pain
  • 現在の状態

の3つを明確にすることを目指しましょう。

また、VPの検討にあたっては「いま検討している提供価値は、本当に顧客に響くのか?」を何度も問いながら、

①提供価値

②プロダクト/サービス

③自社の強み/特徴

の3つが整合するまで深く検討しましょう。

さらに、提供価値について「ひとひねり」を加え、他にはない独自の価値まで検討できるとベストです。

このプロセスを経て、ビジネスモデルの中核の解像度を高めていきましょう。

この中核となる2つが徹底的に検討されることにより、あなたのビジネスモデルはより強固なものとなっていくはずです。

※この続きとなるビジネスモデルキャンバスの残りの要素を埋め、詳細化する方法については、有料セミナー等でも取り扱っている内容となりますので、クローズな限定資料として別途公開予定です。

             

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